HOME > ELEMENTOPIA > 第10戦 憎しみが形となりて



首都ウィンディーンが戴冠式,闘技で賑わいを見せている頃,
ミレナ湖南西の小高い丘から,都市を見下ろす一組の若い男女の姿があった。

「久しぶりに君の国を見た気分はどうかな,レティオーン?」
 端整な顔立ちの青年は,隣の女性の青髪を優しく撫でて,クスクスと笑い声を立てた。
「言うな,ハルス!私はアーセレナの人間だ。ウィンディーンなど…」
「でも,君の母君が健在なら,ウィンディーンがこうも他国に押し込まれる事も
 なかっただろうに。そして今頃は,君自身が女王の冠を戴いていたかもしれない」
「私は,女王などに興味はない。
 だが,愛する人と幸せに暮らしたいとだけ願っていた身重な母を,
 惨めに追い出したウィンディーンの人間は決して許さない。それだけだ」
 吐き捨てるように言って,青年の手をはねのける。
「まあ,ウィンディーンの王家は血統に関して厳格過ぎる程厳格だからね。
 王族の血にアーセレナの血が混ざる事を決して許す事ができなかったのだろう。
 大人の世界なんてそんなものだよ」
 言って直に,強烈に睨まれているのを感じて,青年は慌てて肩をすくめ,おどけて見せた。
「さて,そろそろ行くかい?レティオーン?」

ミレナ湖から首都ウィンディーンにかけて湖面が凍結し,
多くの水獣・地獣が襲い掛かってくるのは,それから間もなくのことだった。
女王は都市に被害が出ないように,都市の外,氷上での防衛を命じ,
各国の戦士達も慶賀使節団を守る為,防衛戦に加わる事になった。

【課題舞台:「氷上」+「水獣・地獣」+「戦闘をイメージ」+「自陣の特徴」】
企画主催者による公式ページはこちら→ 


★a colourful discourse: fragments(色綴り・断章)★
copyright(c) by 茘氏(LYCHEE), all rights reserved.
WARNING: It is forbidden to copy or use any of the works on this page.
このページのすべての画像・記事等に対し,複製・掲載・転載等を禁じます。