HOME > ELEMENTOPIA > 第07話 戦いの足音



【課題シナリオ】

「まずは弁明を聞くこととしようか。アーセレナの王よ」
 フレイドの王ファル・ダルクは,静かに,だが,威圧感をもってアーセレナの王タルナスに迫った。
「弁明? 弁明だと!? 何故,私が貴国に弁明などする必要がある!」
 タルナスは,ありったけの力で机を叩くと,その勢いでファル・ダルクの胸元を鷲づかみにした。
「タルナス王,落ち着いて下さい。仮にも一国の王が,一時の感情で取り乱してはなりません。フレイドの王も,もう少し言い方というものを考えて下さい」
 ウィンディーンの女王クリスは,両国王の肩に手を置き,言い聞かせるように言った。
「冷静だな,女王。だが,こういう話がある事はご存知かね」
 ファル・ダルクは目を細め,やや大袈裟に咳き払いを一つすると言葉を続けた。
「ミリオーネの人々は,フレイドの国民になる事を望んでいる。これ以上,無能な女王の国民でいる事に耐えられないと,有能な国王の元で暮らしたいと,まあ,そういう事だ。国民の願いに応えてやるのが王の役割だとは思わないかね,女王?」
 顔をしかめる女王を嘲るように,ファル・ダルクは豪快に笑った。
「それは…。つまり,我がウィンディーンに対しての宣戦布告だという事ですか」
「単刀直入に言おう。その通りだ。我がフレイドは,ミリオーネ地方を支配下に置く。そして,ファレーンは…」
 そこで言葉を切って,先程よりだんまりを決め込んでいたファレーン王のアディムに目をやり,ほくそ笑む。
「ファレーンは,それに全面的に協力するとの事だ」

 今回の遺跡での出来事は,事を複雑にし,四国間の不戦協定にひびを入れる結果となった。
 何故,ウィンディーンとアーセレナの調査隊だけが助かり,フレイドとファレーンの調査隊が行方不明のままなのか,公表されない調査隊の発表内容とは何なのか。
 ――アーセレナとウィンディーンが手を組んで古代遺跡での成果を分け合い,事実を隠蔽している――
 フレイドとファレーンでこうした噂が広がるまで,大した時間も要しなかった。そして,疑念がいつしか真実として語られるようになり,平和を望む心を蝕んでいく。
 人々は,再び戦いの足音が近づいている事を,敏感に感じ取っていた。

【今回の課題:「王の演説と,それを聞くキャラクターの様子・心境」+「自陣の特徴」】
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